弱さをさらして強くなる
日経ビジネス07年1月29日号を読んでいたら、最後のページに「弱さをさらして強くなる」というタイトルを見つけた。話しの主は、平尾誠二氏であった。言わずと知れた神戸製鋼所ラグビー部で7年連続日本一に導いたラグビーの神様である。現在は、NPOスポーツ・コミュニティー・アンド・インテリジェンス機構(SCIX)を設立され理事長に就任されている。
経験から出た言葉の重みを感じさせる名言が、ずらりと並んでいた。
・リーダーに求められる資質の1つは、自分の弱さを自覚し、向かい合うことだ。
・問題は弱みがあること自体ではない。自信のなさや不安から、他人との間に壁を作ってしまうことにある。
・弱さを認めて、葛藤しながらでも正面から向かい合った時、弱みは強みに変わることもある。
ずしりと来る内容ではないか。続けて、こう述べている。
・弱さを認め、それを克服しようとする姿勢が、人を鍛えるのだ。
・僕は、弱さは強さの対極にあるものではないと思っている。
・それに、人間というのは、弱みを持っているからこそ、他人に共感を与えられるのではないだろうか。
・人を動かすには、能力以上に人間的魅力が重要なのだ。
まさに、そのとおりと思う。そして、こうも言う。
・人は、自信があり過ぎても慢心につながるし、不安や悩みがあまりに高まれば決断に迷いが生じる。
・自信と不安のバランスをうまく保つことが、実は重要なのだ。
そこから、組織論に移る。
・組織も同じだと思う。自信と不安のように相反するように見えるもの、いわば矛盾を抱えながら進化していくものだからだ。
・状況に応じて、自由を選択することもあるし、規律を重んじる場面もある。
・我々は、本来、矛盾をいくつも抱えて生きている。その矛盾を潤滑油としてうまく使いこなすことができた時、人や組織は強くなる。
ヘーゲルの弁証法に「矛盾の止揚による発展」の法則というのがある。
田坂広志氏は、それを次のように説明している。
「すべての物事には、その内部に矛盾が含まれているが、その矛盾こそが物事の発展の原動力となっていく。そして、この矛盾を機械的に解消するのではなく、それを弁証法的に止揚したとき、物事は発展を遂げる。
器の大きな人物
それは、心の中に、壮大な矛盾を把持し、その矛盾と対峙し、格闘し続けることのできる人物。そうした人物に贈られる言葉なのでしょう。」
すばらしいではないか。共に奥の深い言葉である。
パラドックス・マネジメント
この言葉が、今、頭を過ぎった。
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