棚卸しの効果
「棚卸し」、古くて新しい言葉だ。辞書には、「決算時に在庫の数量を調査し、その価値を評価すること」となっている。広く捉えると、「必要なものを見直し、不要なものと区分する」ことも含まれて来るのであろう。
こう解釈すると、ムダを排するという意味から、整理整頓、ジャストインタイム、果てはリストラまで「棚卸し」の概念に入って来るのかもしれない。
私がよく行なう棚卸しは、「本棚の整理」である。六畳の部屋の長辺に当たる部分に、壁一面の作り付けの本棚を持っている。横に7コマ、縦に8列に分かれている。そのそれぞれの区域をジャンルに分け、本を収納している。
基本的に右から本を並べてあるので、遠くから見ると、さながら横棒グラフに見える。どのジャンルの本がたくさんあり、どのジャンルの本が少ないか、一目瞭然なのだ。仕事の分野別にジャンルを分けているため、自分としてどこの知識が不足し、どこが厚いかが、客観的に分かるようになっている。当然、質の問題もあるが、アバウトに量で見ることにも意味がある。
あるジャンルの本が決めた区域に入り切れなくなった場合が、整理のしどころだ。基本的には、「捨てる」。読まない順に思い切って捨てるのである。整理には「捨てる」という意味が含まれている。ちなみに、整頓は「整える」と意味だ。
この「捨てる」行為ができるかが、分かれ道だ。
よく戦略とは「選択と集中」だと言われているが、この言葉は、カッコよ過ぎる。戦略とは「不要な部分を思い切って捨てる」ことなのだ。勇気と愛情が試される行為なのだ。
私の本は、どれもカバーが取り外され、ラインマーカーが至るところに引いてある。愛情を持って、しゃぶり尽くしてある。だからブックオフに持っていくこともアマゾンで売りに出すことも出来ない。
まさに私と運命共同体だ。だから本を捨てるときは、忍び難い。でも捨てる。しかし、その行為により、新たな世界が開けて来るのだ。
棚卸しの効果、それは、新世界への船出である。すこし大袈裟だが、ものを大事にしている方には、お分かり頂けるだろう。勇気と愛情が試される行為なのである。この本を人に置き換えた場合、その意味は、さらに深い意味を持って来る。
| 固定リンク
コメント