虚仮の一念
昨日、新聞を見ていたら広告欄に「プロ棋士の思考術」という
タイトルを見つけた。
著者は、依田 紀基(よだ のりもと)氏。
トップ棋士の中でも、特に優れた大局観をお持ちと
評されている方である。
これは、さっそく読んで見たい。
昼過ぎに本屋へ出向き、さっそく購入して
1階の喫茶店で読み始めた。
そこには、自分のおいたちから、弱さ、至らなさが
赤裸々に著されていた。
小学生の頃の成績が「オール1」だったことも暴露されていた。
その中で、このことばに目が釘付けになった。
「虚仮(こけ)の一念」
虚仮の一念とは、愚か者でも一心にひとつのことを求めて
向かって行けば、目的を達せられるということである。
その強い思いが、意識から無意識の世界へ刷り込まれた
とき、限りなく強い力が発揮されるという。
無意識の世界へ誘うのは、「感動」。
感動し、それを繰り返し、納得を得る過程で
何かが自分のものになって行く。
そうすると、意識せずとも、必要な段階で、得たものが
威力を発揮し、さらに一歩自分を前進させてくれるという。
「求める」ということは、何かを「捨てる」という
ことでもある。
依田氏は、これを棋士らしく、「捨石の発想」と言っている。
こう見ていくと、これはまさに「戦略論」である。
それも、机上の空論ではない。
「生き抜くための戦略論」ともいうべき迫力が伝わって来る。
結構滅茶苦茶な私生活、好きなことしかしないいい加減さ。
でもそれらに流されることなく、ポイントでは、しっかり
自分をコントロールする。
最高の棋士は、実は「最高の自由人」だった。
枠に捉われず、でも熱い思いを胸に抱き、全てを受け入れ
ながら、なおかつ一点に集中していく勝負師の姿を
見せて頂いた。
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