お抱えタクシードライバー
先日高崎へ行った際、おもしろいタクシーの運転手さんと出会った。
「下之城の産業創造館までお願いします。」
「産業創造館?」
「昔のJRの操車場の跡地ですよ。」
「行ったことないな。大体分かるけど下之城は広いからな。」
「はい、これ地図。」
「ああここ、でもどこから入っていくのかな。旧道からかな?」
「いろいろ行き方があるけれど、それが一番分かり易いと思いますよ。」
「とにかく行ってみましょう。」
大丈夫、この運転手さんと思った。
どちらが地元の人なのか分からない。
このような時に備え、会場への案内図はいつも印刷して持参している。
しかし、まったく悪びれたところがない点がいい。
分からないことは、分からないと意思表示してくれた方が助かるというものだ。
一度ある地方でとんでもない所へ連れて行かれたことがあった。
その頃はまだ会社在職中だったので気軽だったが、今はそうは行かない。
「少し遠回りをしてしまいましたので、ここでメーターを切ります。」
目的地までまだかなり距離があったが、この先の料金はいいとのこと。
自分の不手際は自分で始末するということか。
「高崎にはよくいらっしゃるのですか。」
「ここのところ頻繁に来ているよ。」
「今日のお帰りは何時頃ですか。」
「5時半頃かな。」
「よろしければお迎えに上がります。迎車料金はなしで結構です。」
といいながら、手作りの名刺を差し出して来た。
なかなか商売熱心な運転手さんだ。
道すがら、高崎の今昔物語も聞かせてくれた。
興味深い話しが多かったため、とうとう以前高崎に住んでいたことを話し出せなく
なってしまった。
「じゃあ、帰りもお願いしますか。」
と思わず言ってしまった。
夕方玄関を出ると、運転手さんの笑顔が待っていた。
「まるで、お抱え運転手を持った気分です。」
「ぜひ抱えて下さい、私でよろしければ。この先いつでもどこでもお迎えに上がります。」
顔を見合わせ、おもわずお互いに笑ってしまった。
人との触れ合いは、本当に心を豊かにするものだ。
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