虫たちの生態
「やけにバッタが多いな。」
セミの鳴き時雨の中、このような言葉がつい口から
出来てしまった。
そう、人里離れた研修センターでの出来事だ。
夕刻、センターに着いたのだが、初めて訪れた場所だった
ので、興味深々、敷地内を歩き回った。
とても広い所で、管理棟、宿泊棟、食堂棟等、いくつもの
建物が敷地内に散在している。
そして、その間は原生林のまま。
人が2人通れる程の石畳の歩道が、建物をつないでいる。
元々は、虫たちの天国だったに違いない。
そこに逆に、我々がお邪魔している。
「ん、何だこれは。」
始めは、薄暗くてよく分からなかった。
目を凝らすと、その全貌が明らかになった。
「えっ、ムカデがセミを捕食している!」
何匹ものセミが、歩道の上でバタバタとしていた。
多分、その内の一匹を捉えたのだろう。
大きな体をセミに巻き付け、あごの部分だけが動いていた。
まるで、映画を見ているようであった。
「これは凄い。」
しばらく、その珍しい光景に見入っていた。
しかし、気分がだんだん悪くなって来た。
「これが、生存競争か。」
食物連鎖の実態を、改めて認識した。
ムカデを怒らせないよう、その場をそうと後にした。
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