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2011年10月24日 (月)

少尉の指揮刀

先日実家に帰った時、今年2月に他界した父の形見を貰って来た。

その形見とは、海軍少尉だった時に帯剣していた指揮刀だ。

刃はこぼしてあるが、抜刀すると曇りひとつない抜き身が現れる。

父は、学徒動員で学生時代に従軍した。
しかし、召集される前に志願兵で海軍に入隊したと聞いている。

理系の学生だったため、技術将校として処遇された。
実際には、ゼロ戦のエンジン関係の教官をしていたとのことだった。

「エンジンのこの部分の説明が出来る者はいるか。」

上官からのこの質問に手を挙げて答えたら、その日から教官に
なってしまったそうだ。
化学の専攻だったはずだが、まあ確かに機械いじりは得意だった。

確か、今の三沢空港に所属していたはずだ。

銃剣術の達人で、全国優勝もしたことがある。
私のフェンシングのセンスは、父のこの部分を引継いだのかも知れない。

柔道は黒帯。
その後入社した会社では野球部のピッチャー。
テニスもこなした。
水泳は、もちろんお手のものだった。
おまけに、声が素晴らしくよかった。

こう書くと、スーパーマンのように聞こえるだろう。

確かに、個別の技術は、秀でていたように思う。
しかし、人間として完成されていたかと言うと、残念ながら疑問符の
ままだった。

少なくとも、私にとっては、人生に立ち向かって行く部分については、
反面教師だったように思う。

しかし、なぜか父の指揮刀を譲り受ける気になった。
父を許容する心の余裕が生まれて来たからかも知れない。

指揮刀を守り刀として、今後の人生を切り開いて行きたい。

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