少尉の指揮刀
先日実家に帰った時、今年2月に他界した父の形見を貰って来た。
その形見とは、海軍少尉だった時に帯剣していた指揮刀だ。
刃はこぼしてあるが、抜刀すると曇りひとつない抜き身が現れる。
父は、学徒動員で学生時代に従軍した。
しかし、召集される前に志願兵で海軍に入隊したと聞いている。
理系の学生だったため、技術将校として処遇された。
実際には、ゼロ戦のエンジン関係の教官をしていたとのことだった。
「エンジンのこの部分の説明が出来る者はいるか。」
上官からのこの質問に手を挙げて答えたら、その日から教官に
なってしまったそうだ。
化学の専攻だったはずだが、まあ確かに機械いじりは得意だった。
確か、今の三沢空港に所属していたはずだ。
銃剣術の達人で、全国優勝もしたことがある。
私のフェンシングのセンスは、父のこの部分を引継いだのかも知れない。
柔道は黒帯。
その後入社した会社では野球部のピッチャー。
テニスもこなした。
水泳は、もちろんお手のものだった。
おまけに、声が素晴らしくよかった。
こう書くと、スーパーマンのように聞こえるだろう。
確かに、個別の技術は、秀でていたように思う。
しかし、人間として完成されていたかと言うと、残念ながら疑問符の
ままだった。
少なくとも、私にとっては、人生に立ち向かって行く部分については、
反面教師だったように思う。
しかし、なぜか父の指揮刀を譲り受ける気になった。
父を許容する心の余裕が生まれて来たからかも知れない。
指揮刀を守り刀として、今後の人生を切り開いて行きたい。
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