坂の途中のベンチで
イタリアオペラのレッスンを受けるため、いつもM先生のご自宅に
お伺いしている。
ご自宅までは、最寄駅から歩いて20分。
真夏と真冬は少々きついが、今の季節は快適。
ちょうどいい、ウォーミングアップとなる。
いつも、20分位余裕を持ってお伺いしている。
気持ちの切り替えと共に、予習をするため。
待機する場所は、大きな公園に通じる坂道の中腹にあるベンチ。
そこに、まずは腰掛ける。
深呼吸をして、新鮮な空気を胸一杯に吸い込む。
それから、練習開始。
楽譜を広げ、最初の音符の音程を、スマートフォンのアプリで取る。
後は、実際に声を出して歌うのだ。
ただし、比較的小声で。
その坂道は、閑静な住宅地から公園へ下りて行く、ダラダラ坂。
歌っている最中にも、何人もの方々が横を通り過ぎて行く。
散歩中の老夫婦、自転車に乗った親子、犬を連れた奥様、
足のリハビリ中の方、近所の高校の陸上部のメンバー等。
皆さん、別に気に止める事もなく、自然に通り過ぎて行く。
以前、このベンチで、尺八の練習をしている方が先客でいらした。
書き物をしている方も、見掛けた事がある。
そう言えば、クラシックバレエの教室も近所にあった。
この近辺は、そう言う文化地区なのかも知れない。
今の季節、このベンチは、特に居心地がいい。
満開の桜で、坂全体が覆われているのだ。
暖かい日差しを受けながら、桜がやさしく微笑み掛けて来る。
季節の移ろいを肌で感じながら、時間がゆっくり流れて行く。
これからも、坂の途中のベンチで、豊かな時間を過ごしたい。
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