指導者の聖書「言志四録」
「言志四録(げんししろく)」とは、江戸時代を代表する儒者である
佐藤一斎(いっさい)が書き留めた書である。
その内容は含蓄に満ちており、志を立て、自分の運命を切り開き、
世のために尽くさんとする指導者の、まさに聖書と言うに相応しい。
そのため、幕末から明治維新にかけて日本を背負った志士達に
こぞって読まれた。
西郷隆盛に至っては、101条を選び出し「南洲手抄言志録」として
手元に置き、常に肝に銘じていた程。
たいへんな影響力を持っていた事が、伺い知れる。
言志四録は、次の四書から成り立っている。
「言志録」「言志後録(こうろく)」「言志晩録」「言志耋録(てつろく)」
42歳から82歳までの40年間に、総数1133条の心得を記された。
今回は、その内から主だったものを、それぞれ読んだ。
読んだ条数は、順に74条、50条、73条、70条、合計267条。
有名な「三学戒(さんがくかい)」と呼ばれている言葉が、これだ。
「少にして学べば、則ち壮にして為すこと有り。
壮大にして学べば、則ち老いて衰えず。
老いて学べば、則ち死して朽ちず。」
(言志晩録第60条)
学びは、歳に関係なく、貴重なものである事を示してくれている。
自分を信じるという点では、次の言葉が印象的だ。
「一燈を提(さ)げて暗夜を行(ゆ)く。暗夜を憂うること勿(なか)れ。
只(た)だ一燈を頼め。」
(言志晩録第13条)
この言葉に、明治維新の志士達は、どれ程励まされただろうか。
また、天に学ぶ重要性も説いている。
「太上(たいじょう)は天を師とし、其の次は人を師とし、其の次は
経(けい)を師とす。」
(言志録第2条)
優れた人は、天・聖人・書物の順に学びを得るとしている。
ここで言う天とは、自然や宇宙の心理を指している。
夏目漱石の「則天去私(そくてんきょし)」(自我を捨てて天に従う)
と同じ天である。
一言一言が、まさに珠玉の言葉。
大事なのは、これを実行する事。
知行合一(ちこうごういつ)の精神で、臨みたい。
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