深淵なる「中庸」
伊與田覺氏の著した「中庸に学ぶ」を、改めて読み直した。
「中庸」は、孔子の孫となる子思(しし)によって纏められた書。
この書は、諸子百家が競い起こる中、孔子の思想の真髄を
理論的に説いたもの。
そのため、短い語句の中に、深い意味が込められている。
一通り読んだだけでは、理解する事が難しい。
今回、改めて味わいながら、じっくりと読んだ。
「誠は天の道なり。之を誠にするは、人の道なり。」
:嘘偽りのない心こそ、天の道つまり天のルールである。
そして、その天の道に沿って、自らを誠実にして行く事が、
人の道つまり人のルールである。
天の道と人の道は、相通じている。
人の道は、自分の都合に合わせて作る道ではない。
人も含め、この世の全てのものは、天から授かったもの。
我々は「至誠」を貫く事を通し、天に報いる事が求められる。
そのためにも、「君子は其の独りを慎む」必要がある。
誰が見ていなくても、自ら反省し自らを律して行く。
その過程で、知(智恵)、仁(仁徳)、勇(勇気)が醸成されて来る。
「上天(じょうてん)の載(こと)は声も無く臭(におい)も無し。至れり」
:天は声もなく臭いもない。これが究極である。
この状態を察知するには、知識の積み重ねで得られる「学知」
ではなく、「覚(さと)り」が必要。
そのためには、自他共に対し、「素直」になる事。
この素直な心の大事さは、松下幸之助氏が著した
「実践営々哲学」の最後の章に、総括としても掲げられている。
「中庸」は、調和と創造の書と言われている。
素直な心が、最後は天に通じる調和と創造をもたらす。
実に、深い書である。
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