心のバリトンリサイタル
昨夜、移川澄也氏のバリトンリサイタルにお伺いして来た。
このリサイタルは、イタリアオペラの先生のMさんから
お薦め頂いたもの。
以前、先生のお宅で、CDで移川(うつしがわ)氏の歌声を
拝聴させて頂いた事がある。
その時も感動した。
しかし、生で聴くと、その歌声に改めて圧倒されてしまった。
でも、力尽くで押し倒された圧倒ではない。
まさに、深い世界に引き込まれた感じ。
終始目を閉じて、聴かせて頂いた。
視覚の情報を閉じて、ひたすら聴覚だけで辿る。
気負い全くを感じない。
でも、凄い迫力。
まさに、魂の叫びとも受け取れた。
お伺いしている内に、ある言葉が頭に浮かんで来た。
「無為自然」
2500年前、中国の老子が唱えた考え方。
一切の制約から我が身を解放し、あるがままの姿で
生きる。
一見無防備だが、しなやかさと強靭さを備えている。
自分を信じ、自分の心の赴くままに生きて行く。
そこには、自己に対する喜びと厳しさが同居している。
移川氏は、この老子の境地に達していらっしゃる
のだろう。
最後にホール出口で、来られた方々に笑顔で
接し、気さくに声を掛けられている様子が、また
微笑ましかった。
表現の深さは、この人生の深さと関係している
のだろう。
私も、同じバリトンの音域。
歌声で、心を表現し、魂のメッセージを伝えて
行ける人間を目指したい。
またひとつ、心にくさびが打ち込まれた。
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