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2019年6月 6日 (木)

対処コストと残存コスト

コーポレートガバナンス(企業統治)の本を
読んでいた際、興味深い観点を知った。

それが、「対処コスト」と「残存コスト」。
エージェンシー問題を取り扱った章で出て来た。

エージェンシー問題とは、委託者(プリンシパル)と
代理人(エージェント)の間で発生する問題を指す。

株式会社で言うと、株主と取締役等の関係となる。
資本家である株主が、経営を取締役等に委託する。
しかし、両者の利害は、必ずしも一致しない。
そこに、いろいろな問題が生じて来る。

本では、分かり易いように、競馬素人のB君が
競馬玄人のA君にお金を渡し、当たり馬券を
買う事を委託する例が記載されていた。

その馬券が外れた際、以下の「情報格差」により
不信という問題が生じて来る。
① B君は、A君が本当に馬券を買ったか分からない。
② B君は、A君がどの馬券を買ったか分からない。
③ A君の競馬知識は、B君よりも勝っている。

「信頼関係」が低いと、両者間の不信は大きくなる。
不信を避けるために、例えば、馬券を買った時点で
カメラで撮り、事前にB君に送る等が考えられる。
そうすれば、①②は、解消される。

しかし、③は手ごわい。
A君は、自分の競馬知識等能力が低くない事を、
何らかの方法で、B君に証明しなければならない。
でも、完全に不信を解消するには、かなり労力を要する。

不信の解消に要するB君の労力を、対処コスト、
それでも残るA君の不信を、残余コストと言う。

残余コストを限りなく小さくするためには、
対処コストを限りなく大きくするしかない。
馬券を買った時点での対応では、限界がある。

馬券を買った時点ではなく、買う前の、日頃の
「信頼関係」構築の努力が、大事という事だろうか。

コーポレートガバナンスも、行き付く先は、
やはり「利他の精神」であるように感じた。

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