至誠は天地を揺るがす
月刊「致知」最新号を読み進める中で、深く感銘を受けた文面がある。
それが、日産コンツェルンの創業者である鮎川義介氏の生き方。
紹介して頂いたのは、義娘である鮎川雅子氏。
嫁がれた時、鮎川氏は既に亡くなっていた。
しかし、熱く語る中に、その精神が受け継がれているように感じた。
鮎川氏は、戦前に日産自動車、日立製作所、日本鉱業等141社を立ち上げた方。
戦後は、中小企業の支援や育英会の創設等に、心血を注がれた。
一貫するテーマは、人間学に根差した人創りと教育だった。
私利私欲なく、世のため人のために尽くした「無私奉公」の生き方。
今や「無私奉公」は死語となってしまったが、その足跡を辿ると
このような方がいらしたからこそ、今の日本があると強く思う。
鮎川氏が、創業した戸畑鋳物の25周年祝賀式で、以下を述べられている。
「事業をなすには天の時、地の利、人の和と言い伝えられているが、
これを貫くに『至誠』をもってしなくては、事業の成功を期する事は出来ない。」
「至誠は天地を揺るがすという諺の通り、人間、至誠に終始すれば、
絶体絶命の場合には、必ずや強力な支持者が背後に現れ、起死回生の
果報が授けられるものだ、と私は信じている。」
「株式会社の経営者は、株主の受託者であって、同時に従業員の保護者である。
故に、経営側に立つ者は、己を慎み専ら公僕となって公衆の福祉を念とすべし。」
鮎川義介の生涯を貫いた信念は、人創りと教育、そして無私奉公。
渋沢栄一氏は「道徳経済合一論」を説いたが、鮎川氏は「道徳経済一元論」
という随筆を遺している。
その人となりは、如何様だったのだろうか。
きっと、温かみと共に、力強い人間力に溢れた方だったに違いない。
混迷を極める現世。
一人ひとりが、確固たる哲学を持って、事に臨んで行きたいものだ。
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